ボヴァリー夫人は海外モノでは過去一面白かった。視点を変えながらの描写につぐ描写、最後に死して物質化したグロイところも描写。逃げる男の手紙を受け取って、激しく動揺する夫人の視点から見た描写が素晴らしい。当時の読者のフランス中流階級はさぞかし満足の出来だろう。他のフランス小説と違う世情の映し方や距離の取り方も面白い。
ということで、ツバメが飛来する時期だなあと思い、サンテグジュペリの『人間の土地』に入って、もうすぐ読み終わる。死と隣り合わせの飛行、内面、空、砂漠の一体感と孤独の至高がいい。この人は飛行中毒だな。賭博者の美学も感じる。旧軍のパイロットの回想録だったか忘れたが、月や星の見えない夜間飛行は、パイロットが計器飛行に専念しているうちに上下逆になって、知らない間に墜落するという。その点、鳥は裏返って飛んでいるのは見たことない。考えてみると人の平衡感覚は適当だ。
合間に読んだ井伏鱒二が面白かったので、古き昭和前半の日本小説も食していこう。